雨の中ねこが行く

ずぶ濡れの体毛は、それでも輝く。

作者が読み解く「苺と薔薇」

おかしいなあ。日曜日にもかいたようなきがするのだけれど。みずいろこねこです。

この記事は、なつやすみプロデュースノートという企画によって書かれています。

前日の記事は、enutさんのコミケの感想です。まだ確認できていないので省略。

さて書いてまいりましょう。今回解説していくのは

www.pixiv.net

こちらの作品です。自分の書いたものだから好きなようにいじります。わーい。

尚、今回は引用解説はされません。気になったらURLから読みに行ってくださいね。というより一度読んだ人向けです。読んだことある人はたたまれた部分を開いてください。ネタバレから欲しい! って方もどうぞ。

次の担当者はNepさんで、「P活動を振り返る」だそうで。自分を振り返るのは大事だと思います。

お別れの挨拶は畳んだ先に書いてあるので省略です。

☆中身が橘視点のため、基本的に佐久間視点での解説を行います。

☆この作品の時系列はアニデレ舞踏会のアフターストーリー的な位置づけです。

さあ読み解いて参りましょう。まずは冒頭のおてがみみたいな文章。これ、佐久間が書いたものです。橘家で行われたライブの前夜祭が終わったあと、橘が発見したものです。テーブルの上にひっそりと置かれた封筒。中にはリボンと共に一枚だけ便箋が入っていたのです。それを橘は、高揚する気持ちと共に読み進めます。

このお手紙、佐久間は何の気なしに書いたわけではありません。隠せない緊張。自らの想いの強さ。そして、感情の再確認。佐久間は想いが強い半面、それに対する不安感も強いと思われます。人を好きになるのはそれほど大変なことだと思います。不安感は勿論、焦燥感とも向き合うことになるでしょう。その気持ちが強ければ強いほど、純粋なほどに。恋心とはそういうものです。想いが溢れて壊れてしまう前にこうして伝えることはとても重要だと思います。伝わらなくなってからでは、遅いから。

次。

橘と佐久間が初めて出会うシーンですね。このシーンではさらっとした出会いですが、これ以前にも二人は一度顔を合わせています。といってもライブ前挨拶程度で、あとは楽屋のモニタで演技を見た程度。深く認識があるわけでもないので、あまり感情を向けていない……と思いきや、佐久間は割とここで運命的出会いを感じます。なので、ここですれ違った時点で佐久間は割と橘のことがすきだったのです。その気持ちに確証がもてないわけでもなかったのですが、佐久間はPに尽くすことを使命としているのでこの段階ではまだPにべったりです。まあ、Pにはひとつわがままのようなことを言っているのですが。

そのわがままがもう少しあとに出てくる、佐久間と橘の二人でユニットを組みたい、という話です。書き方としては少し言い淀んで橘に促されて橘Pが話す形です。これは、あまりにも唐突すぎる話なので本当に進めていいものなのかと悩む心と、折角のお誘いを袖にするのも申し訳ないと思うそれとで揺れている感情を描いたものです。当たり前ですよね、接点の見えない二人をいきなりユニットになんて……それなりにある話だったわ。でもデレ内ではその傾向は薄いと思ったので……。

ともかく、佐久間はたちばなとのユニット結成を望みます。似ているところがあるから、などとそれっぽい理由をつけてはいますが実際はお近づきになりたいという割と下心丸出しのそれでは流石にまずかろうといい感じにオブラートにくるんだ結果が先の理由です。まあ似ているからとユニット組みたがるのも結構おかしな話なんですけどね。

次。

橘と鷺沢が話すシーンに出てくる佐久間の下馬評。これに関しては割と公式設定的なのを引用していますが、交友関係を少し薄くすることにより、橘にその実体がうまく伝わらないようにしてあります。ここで色々分かってしまっては面白くないですしね。他の人に興味を持つことが珍しい、みたいな書き方をしているのもPに夢中で他人との関係を疎かにしてしまっているものとして書いています。ごめんね佐久間、許してくれ佐久間、酒瓶を振りかざしてこっちに来ないでくれ佐久間。

この後は橘の心中描写なので次ページに行きましょう。

このシーンはぼくのかんがえるさいきょうのみやもとって感じで入れさせてもらいました。端的にいうと、今作のメタキャラクターとでも言っておきましょう。全てを知る者。人の思考を読む、未来のことをアドバイスする、全てを知った上でそれを楽しもうとする。宮本はそういうやつだと思っています(褒めてる)。それでいて真面目なときは真面目にやる、それが宮本。彼女は後半にも出てくるのでまたその時に。

Pとの会話の後、ぼんやりと家に足を向ける橘。コドモゴコロが理解できないため周囲との関係性が悪く、感受性の育たなかった彼女は宮本や佐久間の心が理解できずに考え込んでしまいます。そうして没頭してしまった彼女は、赤信号すら気づくことができずに半ばまで渡ってしまいます。

これは実体験なのですが、交通事故に遭う瞬間って、体が恐怖ではない何かでうごかなくなってしまうのです。僕は幸いにも助かりましたが、本当に見えない何かに抑えつけれているように微動だにできませんでした。みんな気をつけてね。

続けましょう。倫理的思考では避けられることが分かっていても動けない橘、そこに偶然にも通りかかった仕事上がりに束の間の幸せを噛みしめる佐久間。しかし橘を見た瞬間、その体は考えるよりも早く駆け出すのです。それは目の前の悲劇を避けたい為なのか、それとも好意を持った者を失いたくないがためなのか。どっちともつかぬまま駆け出し、年頃の女の子とは思えないほどの瞬発力で橘を引き戻しその命を守ります。トラックは思った以上に早く、佐久間は怒らなかった最悪の結果を想像し恐怖し、そして痛みの中その対象が無事なことにひどく安堵します。腕の力は恐怖を忘れることができずに緩めることができません。彼女のPが追いついて、やっと安堵に胸を撫で下ろすことができたのです。

一種の興奮状態にあったためか感じなかった痛みは、ここで初めて感知されます。すりむいた肘、ひどく打ちつけた背中、慣れない走りで萎えきって震える足。それでも橘に怪我一つないことを確認すると自然に笑顔になり、やっと一声かけることができました。遅れてきた恐怖や安心感で泣きそうな彼女を、無事でよかったと言うように優しく抱きしめてあげることしかできなくなりながらも。

そして腕の中でえずきはじめる橘。そばで見ていたPは、佐久間の頬を伝う涙に気づきます。佐久間もまた、先の恐怖とその後の安心感によって自然と涙が溢れてきてしまったのです。生きててよかった、失わずに済んでよかった、と。このことをきっかけに、佐久間はさらに強く橘を意識するようになります。

ここはこんなもんかな。次ページ。

佐久間と橘の会合が行われる日。橘はあんなことがあったから延期かな、と思いますが佐久間には日付を動かす理由がないので決行します。……というより、延期の連絡をしているPの電話を奪い取って決行です、大丈夫ですと電話を切ったのですが。彼女のPはひどく心配したことでしょう。しかしそれよりも、佐久間は予定を変えたくなかったのです。事故がどうこうでなく、橘が指定した日なのですから。自分の事情で曲げていいものではない、そう考えていたのです。

佐久間はこの日、相手に先日のことを意識させぬよう少し装飾が豪華で傷を隠しやすい長袖の服を選びます。思考の回る橘の前ではそれは完全に意味を為さぬものとされてしまいましたが。当然のことをしただけ、と言いつつもあのことを思い出すとまだ少し辛くなってしまう感情を抑えつけ、橘と向かい合います。

Pが退室してからが本番のこの会談。佐久間はどこまで下心を隠しきれるかに頭を回転させます。少し威圧をして反応をみたりもして。それでも揺るがず噛み付いてくる橘。それでも言いくるめようとする佐久間。欲望に忠実なのはいいことだと思います。いろいろ長く書いていますがまとめるとこんな感じになってしまうんだなあ……。そして問題の質問が飛び出します。

私がどんな人であっても離れていかない自信がありますか? なんて、小学生に聞かれるとは誰も予想つかないでしょう。佐久間はちょっと動揺しつつも、同じ質問をそのまま橘に返します。そして思惑通り、佐久間は橘とユニットを組むことに成功します。……なんかこの書き方、すっごい悪者っぽいな?

さて、ここからお話的には中後半にさしかかっていくので一旦筆を置かせて頂きます。これ以降はショートケーキの日を楽しみにしていてください。またね!